オリーブを育てていると、いつの間にか葉がボロボロになっていたり、新芽が茶色く枯れていたりすることはありませんか。その原因の多くは、オリーブを好んで食べる蛾の幼虫による食害です。せっかく大切に育てているオリーブが、害虫のせいで元気をなくしてしまうのはとても悲しいですよね。
この記事では、オリーブに発生しやすい蛾の幼虫の種類を詳しく解説し、それぞれの特徴や見分け方、効果的な駆除・予防方法をわかりやすくお伝えします。害虫の正体を知ることで、適切な対処ができるようになります。初心者の方でも実践しやすい内容をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
オリーブに発生する蛾の幼虫の種類と見分け方

オリーブの木に集まる蛾の幼虫には、いくつかの代表的な種類が存在します。まずは、自分のオリーブについている虫がどの種類なのかを特定することが、対策の第一歩となります。見た目の特徴や、どのような食べ方をするのかに注目してみましょう。
最も注意が必要なマエアカヒトリメイガ
オリーブ栽培において、最も頻繁に遭遇し、かつ被害が大きいのが「マエアカヒトリメイガ」です。この幼虫は体長が2センチメートルほどで、透き通ったような薄い緑色をしているのが特徴です。頭部は茶褐色で、一見すると非常に弱々しく見えますが、その食欲は非常に旺盛です。
マエアカヒトリメイガは、特にオリーブの柔らかい新芽や若い葉を好んで食べます。成長するにつれて、葉を糸で綴り合わせて巣のようなものを作り、その中に隠れながら食害を広げていきます。新芽が茶色く変色したり、葉が不自然に重なり合っていたりする場合は、この幼虫が潜んでいる可能性が高いでしょう。
発生時期は5月から11月頃までと長く、年に数回発生するため、一度駆除しても油断は禁物です。特に暖かい時期は繁殖スピードが上がるため、毎日の観察が欠かせません。この幼虫を放置すると、樹形が乱れるだけでなく、成長そのものが止まってしまうこともあるため注意が必要です。
巨大な姿が特徴のシマフリスズメ
オリーブの葉が突然大量になくなっている場合、犯人は「シマフリスズメ」というスズメガの仲間かもしれません。この幼虫は非常に大きく、成長すると8センチメートルから10センチメートルほどのサイズになります。その巨体に見合った凄まじい食欲を持っており、一晩で枝一本分の葉を食べ尽くすことも珍しくありません。
シマフリスズメの幼虫は、鮮やかな緑色をしており、体の側面に斜めの白い線が入っています。また、お尻の部分に角のような突起(尾角)があるのが大きな特徴です。体色が葉の色と非常によく似ているため、これほど大きくても見失ってしまうことがありますが、地面に落ちている大きな糞を探すことで場所を特定できます。
基本的には単独で行動することが多いため、集団で発生することは稀です。しかし、1匹あたりの被害量が非常に大きいため、見つけた際は早急に取り除く必要があります。毒はないため素手で触っても問題ありませんが、見た目の迫力に驚く方も多いため、箸や手袋を使って捕獲するのがおすすめです。
蜘蛛の巣のような網を作るアメリカシロヒトリ
「アメリカシロヒトリ」は、非常に多くの樹木を食害する害虫として知られていますが、オリーブも例外ではありません。この幼虫は白い毛に覆われた「毛虫」の姿をしており、集団で行動するのが大きな特徴です。発生初期は、枝先に蜘蛛の巣のような白い網を作り、その中で大勢の幼虫が葉を食べています。
網の中で葉を食い尽くすと、幼虫たちは分散して木全体に広がっていきます。この段階になると個々の移動距離が伸び、駆除が非常に困難になります。そのため、まだ網の中に固まっている初期段階で、枝ごと切り取って処分するのが最も効率的で確実な方法といえるでしょう。
発生は年に2回、初夏と晩夏に見られることが多いです。特に住宅街や公園に近い場所では飛来しやすいため、注意が必要です。アメリカシロヒトリは非常に繁殖力が強く、放置すると近隣の植物にも被害が拡大する恐れがあるため、コミュニティ全体での警戒が求められる害虫でもあります。
葉を巻いて隠れるハマキガの仲間
「ハマキガ」という名前の通り、葉をくるくると巻いたり、複数の葉を糸で貼り合わせたりして、その中に隠れる蛾の幼虫です。オリーブにはチャハマキなどの種類が付着することがあります。体長は1センチメートルから2センチメートル程度で、色は緑色や茶褐色をしており、触れると非常に素早く動き回るのが特徴です。
葉の中に隠れているため、薬剤が直接かかりにくく、駆除が少し厄介な存在です。食害された葉は茶色く枯れたようになり、見た目も悪くなってしまいます。また、葉を食べるだけでなく、実(果実)の表面をかじってしまうこともあるため、オリーブの収穫を楽しみにしている方にとっては天敵となります。
ハマキガの被害を防ぐには、葉が重なっている部分や巻いている部分を定期的にチェックすることが重要です。不自然に丸まっている葉を見つけたら、指で軽く潰すか、その葉を取り除いてしまいましょう。少量であれば手作業で十分対応できますが、広範囲に広がる前に早めのチェックを心がけてください。
マエアカヒトリメイガの生態と深刻な被害

オリーブ栽培者にとって最大の悩みどころであるマエアカヒトリメイガについて、より詳しく掘り下げていきましょう。この害虫を理解することは、オリーブを美しく保つために不可欠です。なぜこれほどまでに恐れられているのか、その生態と被害の実態を解説します。
新芽や若い葉を好んで食べる食性
マエアカヒトリメイガは、オリーブの木の中でも特にエネルギーに満ちた新芽の部分を狙い撃ちにします。新芽は植物にとって成長の起点となる重要な場所ですが、幼虫にとっては柔らかくて栄養価が高く、格好の餌場となります。ここを集中的に食べられると、枝の伸長が止まってしまうのが大きな問題です。
幼虫が新芽を食害すると、先端が茶色くチリチリに枯れたようになります。一見すると水不足や病気のように見えますが、よく観察すると糸が張っていたり、小さな黒い糞がついていたりします。新芽が失われると、オリーブは横から脇芽を出そうとしますが、それもまた狙われるという悪循環に陥りやすいのです。
また、この幼虫は葉の裏側から食害を始めることが多いため、表から見ただけでは気づくのが遅れることがよくあります。葉が透けて見えたり、かすり状の傷がついていたりする場合は、裏側にマエアカヒトリメイガが潜んでいないか必ず確認するようにしましょう。
成長スピードが速く次々と発生するサイクル
マエアカヒトリメイガの恐ろしさは、その凄まじい繁殖サイクルにあります。暖かい時期であれば、卵から成虫になるまでの期間が短く、ひとシーズンの間に4回から5回も世代交代を繰り返します。つまり、一度全滅させたと思っても、数週間後には新しい世代が発生しているという状況が起こり得るのです。
成虫は夜間に飛来し、葉の裏などにまとめて卵を産み付けます。卵は数日で孵化し、小さな幼虫たちはすぐに食事を始めます。最初のうちは目立たないサイズですが、数日で目に見えて大きくなり、食欲も増していきます。このスピード感に対応するためには、週に一度程度の確認では不十分な場合もあります。
特に雨上がりの暖かい日などは、幼虫の成長が促進されやすい傾向にあります。ガーデニングを趣味にする方にとって、この「いたちごっこ」は非常に根気のいる作業になりますが、サイクルを断ち切るためには、成虫が卵を産みにくい環境を作ることと、幼虫が小さいうちに対処することが何よりも大切です。
放置すると光合成ができなくなるリスク
たかが虫一匹と侮ってはいけません。マエアカヒトリメイガの被害を放置すると、木全体の葉がボロボロになり、光合成を行う能力が著しく低下します。植物にとって葉はエネルギーを作る工場のようなものですから、その工場が破壊されると樹勢が弱まり、最悪の場合は枯死に至ることもあります。
特に若い苗木の場合は、葉の絶対数が少ないため、数匹の幼虫によって全ての葉を食べ尽くされてしまうリスクがあります。光合成ができなくなると、根の張りも悪くなり、病気に対する抵抗力も落ちてしまいます。そうなると、他の害虫や菌による病気も併発しやすくなり、回復が難しくなってしまいます。
また、見た目の美しさが損なわれることも、オリーブを観賞用として育てている方には大きな打撃です。スカスカになった枝葉は寂しい印象を与えますし、綴り合わされた葉の中に残る古い糞や抜け殻は不衛生です。健康で美しいオリーブを維持するためには、食害を初期段階で食い止めることが必須条件となります。
冬を越すための越冬対策の重要性
マエアカヒトリメイガは、寒くなると活動を停止しますが、死滅するわけではありません。幼虫の状態で糸を厚く巻いた繭のようなものを作り、葉の隙間や樹皮の割れ目などでじっと冬を越します。これを「越冬」と呼びますが、この越冬個体をいかに減らすかが、翌春の被害規模を左右します。
冬の間にオリーブの木を丁寧に点検し、不自然に重なった葉や、白っぽい糸の塊がないかを探してみてください。それらを取り除いて処分するだけで、春に目覚める害虫の数を大幅に減らすことができます。特に落葉せずに残っている葉の裏は、絶好の隠れ家となっていることが多いので念入りにチェックしましょう。
冬場は植物の成長も止まっており、メンテナンスを忘れがちな時期ですが、この時期のひと手間が来シーズンの成功を決めます。寒さに耐えて春を待つオリーブを助けるつもりで、害虫の隠れ家を掃除してあげましょう。地道な作業ですが、化学農薬に頼りすぎない栽培を目指す方には非常に効果的な方法です。
マエアカヒトリメイガは、特に「ルッカ」や「ミッション」などの品種に関係なく、新芽がある場所ならどこへでもやってきます。新芽の観察を習慣にしましょう。
大型種シマフリスズメの発見と対処法

次に、その大きさに驚かされることも多いシマフリスズメについて解説します。スズメガの幼虫は非常にインパクトがありますが、習性を知れば決して怖い相手ではありません。冷静に状況を判断し、適切に対処するためのポイントを押さえておきましょう。
迷彩柄のような見た目と尻尾の突起
シマフリスズメの幼虫は、自然界に溶け込む見事な迷彩柄を持っています。鮮やかな緑色の体に、斜めに入った白い縞模様が、オリーブの葉の影や葉脈にそっくりなのです。そのため、数センチメートル先を見ていても、動かない限りは全く気づかないということも珍しくありません。
最大の特徴は、お尻のあたりにあるツンと尖った突起(尾角)です。これがあることで、他の蛾の幼虫や蝶の幼虫と簡単に見分けることができます。この突起は毒針ではなく、敵を威嚇するためのものと言われていますが、刺される心配はありません。指で触れると頭を振って嫌がることがありますが、攻撃してくることはないので安心してください。
幼虫が大きくなるにつれて、体の色に深みが増し、肌の質感も少しゴツゴツとした感じになります。ここまで育つと、葉を食べる音(シャリシャリという音)が聞こえることさえあります。不思議な魅力を持つ虫ではありますが、オリーブにとっては非常に危険な「大食漢」であることを忘れてはいけません。
1匹でも葉を大量に食べ尽くす食欲
シマフリスズメの最大の問題点は、その圧倒的な食事量です。マエアカヒトリメイガが小さな面積を少しずつ食べるのに対し、シマフリスズメは葉を丸ごと、それも次から次へと平らげていきます。朝起きたら枝の先端の葉が半分なくなっていた、というような急激な変化がある場合は、まずスズメガを疑いましょう。
特に幼虫が終齢(蛹になる直前の最も大きい段階)になると、その食事量はピークに達します。1日で自分の体重の数倍もの葉を食べるとも言われており、放置しておくと数日で中型のオリーブの木が丸裸にされてしまうことさえあります。見つけた時は、迷わずすぐに対処することが求められます。
幸いなことに、シマフリスズメは一度に何十匹も発生することは少なく、通常は1〜2匹程度が木に付いています。そのため、その数匹さえ見つけ出せば、被害をピタリと止めることができます。被害のスピードが速い分、発見した時の安堵感も大きい害虫と言えるかもしれません。
糞を見つけて居場所を特定するテクニック
シマフリスズメを探す際、葉の裏を一枚一枚めくるのは非常に大変です。そこで活用したいのが「糞(ふん)」による追跡調査です。シマフリスズメは体が大きいため、出す糞も非常に大きく目立ちます。黒っぽくてゴロゴロとした、まるで手榴弾のような形をした数ミリメートルの糞が地面や下の葉に落ちていないかを確認しましょう。
もし、地面に新しい糞が落ちていたら、その真上の枝に必ず幼虫が潜んでいます。糞が湿っていれば、それは「今そこにいる」という確かな証拠です。視線を上に向けて、枝の形に擬態している大きな緑色の塊を探してみてください。一度コツを掴むと、糞を見るだけで「あ、ここにいるな」とすぐに分かるようになります。
この方法は、農薬を使わずに管理したい方にとって非常に有効です。虫本体を見つける前に、その「痕跡」から居場所を絞り込むことができるため、効率よく作業が進みます。ベランダ栽培などの場合は、床の掃除を兼ねて毎日チェックするだけで、早期発見の確率がぐんと高まります。
捕殺が中心となる基本的な駆除方法
シマフリスズメの駆除において、最も確実で環境負荷が低いのが「捕殺(ほさつ)」です。つまり、見つけて捕まえるというシンプルな方法です。薬剤を使っても死ぬまでにある程度の時間がかかり、その間も葉を食べ続けてしまうため、手で取り除いてしまうのが一番の近道となります。
捕まえる際は、足(腹脚)が枝に強力にしがみついているため、無理に引っ張ると幼虫の体がちぎれたり、枝を傷めたりすることがあります。枝ごと切り取ってしまうか、幼虫のお尻側から少しずつ押し出すようにして剥がすとスムーズに捕獲できます。虫が苦手な方は、割り箸を2膳使って挟むようにすると良いでしょう。
捕獲した後は、可燃ごみとして出すか、地面に深く埋めるなどの処置を行います。少し可哀想に感じるかもしれませんが、オリーブを守るための決断です。もし周囲に自然豊かな場所があれば、そこへ移動させるという選択肢もありますが、移動先でも食害を起こす可能性がある点は留意しておきましょう。
シマフリスズメ対策のまとめ
1. 地面の糞を探して居場所を特定する。
2. 枝に擬態している姿を見逃さない。
3. 薬剤よりも「捕殺」が最も確実で速い。
蛾の幼虫からオリーブを守る予防策

害虫が発生してから対処するのは大変ですが、あらかじめ発生しにくい環境を整えておくことで、被害を未然に防いだり、最小限に抑えたりすることができます。オリーブが持つ本来の力を引き出しつつ、蛾が寄り付きにくい環境を作るための具体的な予防策をご紹介します。
風通しを良くする剪定のメリット
蛾の幼虫、特にマエアカヒトリメイガやアメリカシロヒトリなどは、空気が淀んで湿気がこもりやすい場所を好みます。枝葉が密集しすぎていると、外敵である鳥や蜂からも見つかりにくいため、害虫にとっては最高の隠れ家になってしまいます。これを防ぐために最も効果的なのが「剪定(せんてい)」です。
剪定を行い、木の内側まで日光と風が届くようにすることで、害虫が卵を産み付ける場所を減らすことができます。また、風通しが良いと、万が一害虫が発生しても発見が早まり、薬剤を散布する際も隅々まで行き渡りやすくなります。オリーブは成長が早いので、混み合ってきたと感じたら適宜枝をすいてあげましょう。
特に夏場の高温多湿な時期を前に、不要な枝(内側に向かって伸びている枝や、下向きの枝など)を整理しておくことが重要です。これにより、害虫予防だけでなく、オリーブの健康状態そのものも向上し、実の付きも良くなるという相乗効果が期待できます。清潔感のある樹形を保つことが、防虫の第一歩です。
防虫ネットを活用した物理的な遮断
まだ木が小さいうちや、絶対に虫を付けたくない重要な株がある場合は、防虫ネットで覆ってしまうのが最も確実な予防法です。蛾の成虫は夜間に飛来して卵を産み付けるため、物理的に成虫を木に近づけさせないことで、幼虫の発生をほぼゼロに抑えることが可能になります。
使用するネットの網目は、蛾が通り抜けられないサイズ(1ミリメートル以下推奨)を選んでください。ネットを被せる際は、地面との隙間を作らないように裾をしっかり固定するのがポイントです。ただし、ネットをずっと被せっぱなしにすると、風通しが悪くなったり、受粉ができなくなったりするデメリットもあります。
そのため、新芽が伸びる時期や、害虫の発生ピークに合わせて期間限定で使用するのが賢い活用法です。また、ネットの中で害虫が発生してしまうと「温室状態」になり、逆に被害が加速することもあるため、ネットを被せる前に必ず虫がいないかを確認し、被せた後も時々中をチェックするようにしましょう。
定期的な観察で卵や若齢幼虫を見つける
「観察に勝る防除なし」と言われるほど、日々のチェックは重要です。週に数回、オリーブの木をぐるりと一周しながら、葉の様子を眺めてみてください。この時、単に眺めるだけでなく、時々葉をめくって裏側を確認するのがプロの視点です。蛾は非常に賢く、天敵に見つかりにくい葉の裏に好んで卵を産みます。
マエアカヒトリメイガなどの卵は、非常に小さく最初は見つけにくいかもしれません。しかし、卵が孵化した直後の「若齢幼虫」の段階で見つけることができれば、被害はごくわずかで済みます。若齢幼虫は集まっていることが多いため、その部分の葉を数枚摘み取るだけで駆除が完了します。
観察を習慣化すると、「いつもと何かが違う」という違和感に敏感になります。葉の輝きが鈍かったり、わずかに糸が引いていたりするサインを見逃さないようにしましょう。忙しい毎日の中で時間を確保するのは大変ですが、お茶を飲みながら数分間オリーブと向き合う時間は、癒やしとともに植物を守る大切な儀式になります。
有機栽培でも使える薬剤の選び方
「虫を見つけるのが苦手」「手作業では追いつかない」という場合には、薬剤の力を借りるのも一つの手です。最近では、環境や人体への影響が少なく、有機栽培でも使用が認められているような自然由来の成分を使った薬剤も多く販売されています。例えば「BT剤」と呼ばれる微生物殺虫剤は、その代表格です。
BT剤は、特定の害虫(主に蛾や蝶の幼虫)が食べることで効果を発揮するもので、人や鳥、有益な昆虫(ハチやテントウムシなど)にはほとんど影響がないのが最大の特徴です。オリーブの葉に散布しておき、それを幼虫が食べることで退治します。薬害も出にくいため、初心者の方でも安心して使うことができます。
散布する際は、幼虫が潜んでいる葉の裏側や、食害を受けやすい新芽の部分にしっかりとかかるように意識しましょう。また、雨が降ると成分が流れてしまうため、天気が続く日を選んで作業を行うのがコツです。薬剤を上手に取り入れることで、精神的な負担を減らしながら、効率的にオリーブを守ることができます。
害虫被害に遭った後のアフターケア

どれだけ気をつけていても、害虫の被害を完全に防ぐことは難しいものです。もし大切なオリーブが蛾の幼虫に食べられてしまっても、諦める必要はありません。その後の適切なアフターケアを行うことで、オリーブは驚くほどの生命力で復活してくれます。回復をサポートするためのポイントを見ていきましょう。
食害された枝の整理と樹形の整え方
幼虫を駆除した後は、まず被害に遭った部分の整理を行います。マエアカヒトリメイガによって綴り合わされた葉や、シマフリスズメに食べられて軸だけになった枝などは、そのままにしておくと見た目が悪いだけでなく、病気の原因になることもあります。枯れている部分は思い切って清潔なハサミで切り取りましょう。
特に新芽が食べられてしまった場合、そのままでは変な方向に脇芽が伸びて、樹形が乱れてしまうことがあります。被害を受けた箇所の少し下の、元気な芽(節)がある場所で切り戻しを行うことで、新しい芽の成長を促し、バランスの良い樹形へと整え直すことができます。
剪定を行う際は、切り口から雑菌が入らないよう、天気の良い日を選んで行うのが理想的です。大きな枝を切った場合は、癒合剤(ゆごうざい)を塗って保護してあげるとより安心です。「食べられたから終わり」ではなく、「新しい芽を出すためのリセット」と前向きに捉えて、丁寧に手入れをしてあげましょう。
樹勢を回復させるための肥料と水やり
葉を大量に失ったオリーブは、一時的にエネルギー不足の状態にあります。失った葉を再生させるためには、相応のパワーが必要です。そこで、樹勢を回復させるためのサポートを行いましょう。まずは基本的なことですが、水やりを適切に行い、土が乾きすぎないように注意します。
次に、栄養補給としての肥料です。ただし、弱っている時に一度に大量の肥料を与えるのは逆効果(肥料焼けの原因)になることがあります。即効性のある液体肥料を薄めに与えるか、ゆっくり効く緩効性肥料を規定量施して、じっくりと体力を戻してあげるのが正解です。特に窒素分を含んだ肥料は、葉や茎の成長を助けてくれます。
また、活力剤を活用するのも有効な手段です。肥料とは異なり、植物の代謝をスムーズにするビタミンやミネラルが含まれているものが多いため、ダメージを受けた後の回復期には適しています。オリーブが自力で新しい緑を増やそうとする力を、優しく後ろから押しあげるイメージでケアを続けてください。
翌年に被害を持ち越さないための清掃
害虫対策は、その場限りの駆除で終わるものではありません。実は、食害された後の「後片付け」が、来年の発生を抑えるための重要な鍵を握っています。地面に落ちた食い残しの葉や、幼虫の糞、そして取り除いた枝などは放置せず、速やかに処分しましょう。これらが残っていると、次の害虫を呼び寄せる原因になります。
特に秋以降の被害の場合、葉の隙間に卵やサナギが隠れている可能性が非常に高いです。木の下に落ちている枯れ葉を掃除し、土の表面を軽く整えるだけでも、越冬場所を奪うことができます。鉢植えの場合は、鉢の縁や裏側などもチェックしてみてください。案外、そんな意外な場所にサナギが潜んでいるものです。
お庭全体を清潔に保つことは、オリーブ以外の植物を害虫から守ることにもつながります。シーズンの終わりには、オリーブに「今年もありがとう」と声をかけるつもりで、周辺の清掃を行ってみてください。そのひと手間が、翌春の清々しい新芽の芽吹きを約束してくれます。
害虫が寄り付きにくい環境作り
最後のケアは、将来に向けた環境の見直しです。なぜその木に害虫が集中してしまったのかを考えてみましょう。もし日当たりが悪かったり、周りに雑草が茂っていたりするなら、改善の余地があります。害虫は、弱っている植物や、手入れが行き届いていない場所を本能的に見抜いて集まってきます。
例えば、周囲に蛾の仲間が好む他の植物(ヘチマやネズミモチなど)がないか確認してみてください。もしあれば、それらの植物の害虫管理も同時に行う必要があります。また、コンパニオンプランツ(共栄植物)として、害虫が嫌がる香りを持つハーブ(ゼラニウムやラベンダーなど)を近くに植えるのも、自然な形での予防策として人気があります。
オリーブを単体で考えるのではなく、お庭全体の「生態系」を整える意識を持つことが、結果的に害虫に強いオリーブを育てることになります。強く、たくましく育ったオリーブは、多少の食害を受けても跳ね返すだけの力を持っています。害虫との出会いを、より良い栽培環境を作るきっかけにしていきましょう。
復活したオリーブの新芽はとても美しいものです。被害を乗り越えた木は、以前よりも愛着がわくはずですよ。
オリーブを蛾の幼虫の種類に合わせた方法で守るまとめ
オリーブに発生する蛾の幼虫には、いくつかの種類があり、それぞれに異なる特徴や被害の出し方があります。透き通った緑色のマエアカヒトリメイガ、巨大なシマフリスズメ、集団で網を作るアメリカシロヒトリなど、まずは相手を正しく知ることが大切です。敵の正体が分かれば、必要以上に恐れることはありません。
対策の基本は、日頃の「観察」と「風通しの確保」です。新芽の様子をチェックし、地面の糞に注意を払うことで、被害が拡大する前に手を打つことができます。また、手作業での駆除だけでなく、BT剤などの環境に優しい薬剤を賢く取り入れることで、管理の負担をぐっと減らすことが可能になります。
万が一被害に遭ってしまっても、オリーブの強い生命力を信じてアフターケアを行ってください。適切な剪定と栄養補給を行えば、また美しい緑の葉を茂らせてくれます。害虫対策は、オリーブとの対話の時間でもあります。この記事で紹介した知識を活かして、ぜひ健やかで美しいオリーブ栽培を楽しんでください。
| 種類 | 主な特徴 | 見分け方 | 対策のポイント |
|---|---|---|---|
| マエアカヒトリメイガ | 薄緑色、小型(2cm) | 新芽を糸で綴る | 新芽の頻繁なチェック |
| シマフリスズメ | 大型(10cm)、緑色 | 巨大な糞、お尻に角 | 糞から居場所を特定 |
| アメリカシロヒトリ | 毛虫状、白い毛 | 枝先に白い網を作る | 初期に枝ごと除去 |
| ハマキガ類 | 緑〜茶、すばしっこい | 葉をくるくる巻く | 巻いた葉を摘み取る |




