オリーブを育てていると、根元から勢いよく伸びてくる細い枝に気づくことがあります。これは「ひこばえ」と呼ばれるもので、放っておくといつの間にか主役の幹を追い越すほどの勢いで成長することもあります。オリーブのひこばえを残すか切るかは、その木の健康状態や、将来どのような樹形にしたいかによって決まります。
基本的には切り取ることが推奨されますが、状況によってはあえて残すことで株を若返らせる貴重なチャンスになる場合もあります。この記事では、ひこばえの正しい扱い方や剪定のメリット、具体的な切り方のコツを分かりやすく解説します。大切なオリーブを長く美しく育てるためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
オリーブのひこばえを残すか切るか迷った時の基本ルール

オリーブの株元から生えてくるひこばえを見つけたとき、そのままにして良いのか、それともすぐに切り落とすべきなのか迷ってしまう方は多いでしょう。まずは、ひこばえがどのような性質を持っているのか、そして栽培の基本としてどのように扱うべきなのかを知ることが大切です。
ひこばえが発生する理由とその正体
ひこばえとは、樹木の根元や地面に近い部分から新しく伸びてくる若い枝のことを指します。オリーブは生命力が非常に強く、特に根の張りが良い株や、成長が盛んな時期にはこのひこばえが頻繁に発生します。植物学的には「不定芽(ふていが)」と呼ばれる芽が、何らかの刺激や生理的な要因によって成長したものです。
発生の主な原因は、株全体に栄養が余っている場合や、逆に主幹(メインの幹)がダメージを受けて弱っている場合の防衛反応などが挙げられます。木が自分の子孫を残そうとしたり、衰退したメインの幹を補おうとしたりする際に、地際から新しい命を吹き出させるのです。そのため、ひこばえが出ること自体は、そのオリーブにまだ活力がある証拠でもあります。
しかし、ひこばえは主幹に比べて成長スピードが非常に速いという特徴があります。これは根から吸収したばかりの新鮮な水分や栄養を真っ先に受け取ることができる位置にあるためです。そのまま放置すると、本来成長してほしい上の枝葉よりも勢いが増してしまい、株全体のバランスを崩す原因となります。
原則として「切る」ことが推奨される理由
家庭でオリーブを育てる場合、特別な目的がない限りひこばえは「見つけ次第切る」のが大原則です。その最大の理由は、栄養の分散を防ぐためです。ひこばえは非常に「食いしん坊」な枝であり、根から上がってくる栄養を途中で横取りしてしまいます。その結果、本来太くなってほしいメインの幹や、花や実をつけたい上部の枝に栄養が行き渡らなくなってしまいます。
また、樹形を美しく保つという観点からも、ひこばえの放置は好ましくありません。オリーブはシルバーグリーンの葉が涼しげに広がる姿が魅力ですが、足元に細い枝が茂ってしまうと、見た目が野暮ったくなり、管理が行き届いていない印象を与えてしまいます。特にシンボルツリーとして一本立ち(スタンダード仕立て)にしている場合は、一本の幹を強調するために足元は常にスッキリさせておく必要があります。
さらに、ひこばえが密集すると、株元の通気性が極端に悪くなります。オリーブは乾燥した環境を好み、蒸れを嫌う植物です。足元が湿った状態が続くと、根腐れのリスクが高まるだけでなく、後述する深刻な害虫被害を招く引き金にもなりかねません。そのため、健康維持のためにも定期的なチェックと除去が欠かせない作業となります。
あえて「残す」判断をする例外的なケース
一方で、ひこばえを絶対に切らなければならないわけではありません。特定の状況下では、あえて「残す」という戦略的な判断をすることがあります。その代表例が「主幹の更新」です。育てているオリーブのメインの幹が病気にかかったり、害虫に食害されたり、あるいは老齢化して勢いがなくなったりした場合、ひこばえを次世代の主幹として育て上げることができます。
また、見た目のデザインを重視して「株立ち(かぶだち)」仕立てにしたい場合も、ひこばえを残します。株立ちとは、根元から数本の幹が立ち上がっているスタイルのことで、一本立ちよりもナチュラルでボリュームのある印象になります。この場合、バランスの良い位置から生えているひこばえを数本選び、それ以外の不要なものを整理しながら育てていくことになります。
さらに、万が一主幹が冬の寒さや夏の乾燥で枯れてしまったとしても、ひこばえが元気であれば、そこから株全体を復活させることが可能です。このように、ひこばえはオリーブにとっての「予備の命」のような役割も果たしています。現在の樹形に満足しているか、それとも将来的に形を変えたいのかによって、残すか切るかの決断を下しましょう。
ひこばえを剪定することで得られる大きなメリット

ひこばえを適切に切ることは、単に見た目を整えるだけではありません。オリーブという植物が持つ本来の力を引き出し、病害虫から身を守るための重要なメンテナンスです。ここでは、ひこばえを切ることで得られる具体的なメリットを3つの視点から詳しく見ていきましょう。
栄養をメインの主幹に集中させ成長を促す
オリーブの成長エネルギーは有限です。根から吸い上げられた肥料成分や水分、そして葉で行われる光合成によって作られた栄養分は、植物全体に分配されます。ここでひこばえを放置しておくと、その旺盛な成長力によって貴重なエネルギーの多くがひこばえに費やされてしまうのです。これを防ぐために剪定を行うことは、栄養の「集中投資」を意味します。
ひこばえを早めに切り落とすことで、これまで奪われていたエネルギーが主幹や主要な枝へとスムーズに流れるようになります。すると、幹がより太く丈夫になり、風にも強い安定した株へと成長します。また、枝先に十分な栄養が届くことで、葉の色艶が良くなり、オリーブ特有の美しい輝きが増していくのを実感できるでしょう。
特に収穫を目的としている場合、ひこばえの整理は必須です。実をつけるためには非常に多くのエネルギーが必要とされるため、余計な枝に栄養を奪われている状態では、実付きが悪くなったり、実が大きく育たなかったりします。効率よく高品質な実を収穫するためにも、足元の不要な枝はこまめに整理して、上部へパワーを送ってあげることが大切です。
天敵「オリーブアナアキゾウムシ」の被害を防ぐ
オリーブ栽培において最も警戒すべき害虫が「オリーブアナアキゾウムシ」です。このゾウムシは、オリーブの幹の根元付近に卵を産み付け、孵化した幼虫が幹の内部を食い荒らします。被害が進行すると最悪の場合、木全体が枯れてしまう非常に厄介な天敵です。ひこばえを放置して足元が茂っている状態は、このゾウムシにとって絶好の隠れ家と産卵場所を提供していることになります。
ひこばえを切って根元をスッキリさせておくと、ゾウムシが隠れる場所がなくなり、産卵を抑制する効果が期待できます。また、何より重要なのが「早期発見」です。足元がきれいであれば、ゾウムシが穴をあけた際に出るおがくず状の糞(フラス)にすぐ気づくことができます。ひこばえが茂っていると、この重要なサインを見逃してしまい、気づいたときには手遅れになっているケースが少なくありません。
プロの農家がひこばえをこまめに切る最大の理由は、この害虫対策にあると言っても過言ではありません。愛着のあるオリーブを守るためには、常に幹の地際が見える状態にしておくことが、最も効果的な予防策となります。虫が苦手な方こそ、ひこばえの剪定を習慣化して、清潔な環境を保つようにしましょう。
日当たりと風通しを改善し病気のリスクを下げる
オリーブは地中海沿岸のような、乾燥して陽光が降り注ぐ環境を好みます。ひこばえが密集して生えていると、その場所だけ湿度がこもりやすく、不衛生な環境になりがちです。特に日本の梅雨のような高温多湿な時期には、ひこばえの隙間でカビが繁殖しやすくなり、炭疽病(たんそびょう)などの病気が発生する原因となります。
ひこばえを切ることで、地面に近い部分の風通しが劇的に改善されます。風がスムーズに通り抜けるようになれば、雨の後でも湿気がすぐに乾き、病原菌が繁殖しにくい清潔な状態を維持できます。また、足元まで日光が届くようになることで、土壌表面の殺菌効果も期待でき、根全体の健康維持にもつながります。
光合成の効率という面でもメリットがあります。下の不要な枝を整理すれば、株全体の葉に光が当たりやすくなり、木全体の活性が高まります。下部のジメジメした環境は、病気だけでなくアブラムシやカイガラムシといった他の害虫の発生源にもなり得ます。剪定によって風と光を呼び込むことは、化学的な農薬に頼りすぎない自然な健康管理の第一歩なのです。
ひこばえを剪定することは、オリーブに「どこを成長させるべきか」を教える合図でもあります。足元を整えることで、木全体の防衛力と生産性が向上し、長く元気な姿を楽しめるようになります。
失敗しない!ひこばえを適切に切る方法と最適な時期

ひこばえを切る重要性は理解できても、いざハサミを入れるとなると、どのタイミングで、どこから切れば良いのか不安になるかもしれません。オリーブに負担をかけず、かつ効果的に処理するための具体的な手順とポイントを紹介します。
負担をかけずに作業できるシーズンとタイミング
ひこばえの処理自体は、基本的には一年中いつでも行うことが可能です。特に小さな芽の状態であれば、季節を問わず気づいたときに指で摘み取ったり、ハサミでカットしたりするのが理想的です。しかし、ある程度育ってしまったひこばえをまとめて処理するのであれば、オリーブの剪定適期である2月から3月の春先に行うのが最もお勧めです。
この時期はオリーブが休眠から明け、これから本格的な成長期に入る直前です。このタイミングで不要なひこばえを整理しておけば、春からの成長エネルギーを無駄なく主幹に集中させることができます。また、寒い時期は病原菌の活動も鈍いため、切り口からの感染リスクを低く抑えられるという利点もあります。
一方で、梅雨時期や夏の盛りなどは避けた方が無難な場合もあります。湿気が多い時期に大きな切り口を作ると、そこからカビが入る恐れがあります。また、真夏は木自体が暑さでストレスを感じているため、強すぎる剪定は禁物です。もし夏場に見つけた場合は、細い枝だけをサッと整理する程度に留め、本格的な作業は春か秋の穏やかな日を選んで行いましょう。
用意すべき道具とハサミの入れ方のコツ
ひこばえをきれいに切るためには、適切な道具の準備が欠かせません。基本的には一般的な「剪定ハサミ」があれば十分ですが、木が大きくなりひこばえが太くなっている場合は、無理をせず「剪定ノコギリ」を使用してください。無理にハサミで押し切ろうとすると、切り口が潰れてしまい、治りが遅くなる原因になります。
道具を使用する際に最も重要なのが「清潔さ」です。汚れたハサミを使用すると、切り口から細菌やウイルスが侵入し、株全体を病気にしてしまう可能性があります。使用前には必ず刃をアルコールで消毒したり、汚れを拭き取ったりしてから作業を始めましょう。これは他の植物を剪定した後のハサミを使い回す際も同様です。
切る際のコツは、「付け根から残さず切る」ことです。地面より少し上の部分で中途半端に切ってしまうと、残った部分から再び複数の新しい芽が出てきてしまい、かえって状況が悪化することがあります。土を少し掘り起こしてでも、幹や根との接合部ギリギリを狙ってカットするのが、再発生を防ぐための秘訣です。このとき、主幹の樹皮を傷つけないよう慎重に刃を当てましょう。
切り口のアフターケアと癒合剤(ゆごうざい)の使い方
ひこばえを切り終えたら、最後の大切な仕上げが「アフターケア」です。細い枝であればそのまま乾かしても問題ありませんが、直径が1〜2センチを超えるような太いひこばえを切った場合は、癒合剤(ゆごうざい)を塗ることを強くお勧めします。癒合剤とは、人間でいうところの「絆創膏」のような役割を果たす薬剤です。
切り口をそのままにしておくと、そこから水分が蒸発して枝枯れを起こしたり、雨水と一緒に病原菌が入り込んだりするリスクがあります。市販の癒合剤を切り口に薄く塗ることで、傷口を保護し、植物自身の修復機能(カルスの形成)を助けることができます。また、切り口が目立たなくなるため、見た目の仕上がりも格段に良くなります。
癒合剤を塗る際は、切り口が完全に乾ききる前に行うのが効果的です。指やヘラを使って、切り口の断面全体を覆うように丁寧に伸ばしてください。このひと手間を惜しまないことが、数年後のオリーブの健康状態を左右します。特に地植えの場合は、地面に近い切り口は湿気の影響を受けやすいため、しっかりとガードしてあげることが長生きの秘訣となります。
ひこばえ剪定のステップまとめ
- 剪定ハサミをアルコール消毒して清潔にする。
- ひこばえの付け根を確認し、土があれば少し避ける。
- 主幹を傷つけないよう、付け根ギリギリでスパッと切る。
- 切り口が太い場合は、速やかに癒合剤を塗って保護する。
幹の若返りに活用!ひこばえを「残す」場合の育て方

基本的には不要とされるひこばえですが、時には「戦略的な資源」として活用することができます。オリーブが古木になったり、主幹が深刻なダメージを受けたりした際、ひこばえは株全体をリセットして若返らせるための救世主となり得ます。ここでは、ひこばえをポジティブに活用する際の方法を解説します。
主幹の世代交代(更新)を行う具体的な手順
長年育てたオリーブの幹に元気がなくなり、枝先が枯れ込んできた場合や、アナアキゾウムシの被害で主幹がボロボロになってしまった場合には、「幹の更新」を行いましょう。これは、既存の古い幹を切り倒し、根元から生えてきた元気なひこばえを新しい主幹として育て直す作業です。オリーブは再生能力が高いため、この方法で驚くほど見事に復活します。
まずは、根元から出ているひこばえの中から、最も勢いが良く、まっすぐ上に伸びているものを1本選びます。それ以外のひこばえは全て根元から整理し、選んだ1本に栄養が集中するようにします。次に、古い主幹を根元から数センチ〜数十センチの高さで思い切ってノコギリでカットします。この時、選んだひこばえを傷つけないよう細心の注意を払ってください。
古い幹を切り落とした後は、切り口にたっぷりと癒合剤を塗り、腐敗を防ぎます。残されたひこばえは、まだ自立する力が弱いことが多いため、支柱を立ててしっかりと支えてあげましょう。数年もすれば、そのひこばえは立派な太い幹へと成長し、若々しい枝葉を茂らせるようになります。古い木を諦めて伐採する前に、ぜひ試していただきたい再生術です。
株立ち仕立てでナチュラルな樹形を楽しむ
一本の幹がスッと立つスタンダードな樹形も素敵ですが、あえて複数のひこばえを育てることで「株立ち(かぶだち)」というスタイルに仕立てることも可能です。株立ちは、自然界にある樹木のような野趣あふれる雰囲気を演出でき、庭の目隠しや背景としても非常に優秀です。このスタイルを目指すなら、ひこばえを計画的に残す必要があります。
手順としては、まず根元から生えているひこばえの中から、バランスの良い位置にあるものを2〜4本ほど選びます。このとき、既存の主幹と合わせて全体で3本、あるいは5本といった「奇数」になるように構成すると、視覚的にバランスが整いやすくなります。選んだひこばえ同士が重なりすぎないよう、それぞれの伸びる方向を意識しながら間引いていきましょう。
株立ちに仕立てる場合は、それぞれの幹に日光が当たるように調整するのがコツです。成長に合わせて、内側に伸びる枝を優先的に剪定し、株の内側を常に明るく保つようにします。また、それぞれの幹の太さがバラバラにならないよう、勢いの強すぎるものは先端を止めるなどして、全体の成長スピードを揃えてあげると、より美しい仕上がりになります。
切り取ったひこばえを挿し木として再利用する方法
本来なら捨ててしまうひこばえも、実は「挿し木(さしき)」の材料として非常に優秀です。ひこばえは細胞の分裂が活発な若い組織でできているため、古い枝に比べて根が出やすいという特徴があります。愛着のあるオリーブのクローンを増やしたいなら、ひこばえを使わない手はありません。
挿し木にする場合は、切り取ったひこばえの中から、鉛筆ほどの太さがあり、節の間隔が詰まっている元気な部分を10〜15センチ程度の長さにカットします。下の葉を数枚取り除き、断面を斜めにカットして吸水面を広げます。その後、1〜2時間ほど水に浸けて十分に水分を吸わせた後、清潔な挿し木用の土に挿してください。
成功率を高めるためには、発根促進剤(ルートンなど)を切り口にまぶしてから挿すのがお勧めです。直射日光の当たらない明るい日陰で管理し、土を乾かさないように注意していれば、数ヶ月で新しい根が出てきます。ひこばえという「不要なもの」から新しい苗木が誕生する喜びは、ガーデニングならではの醍醐味と言えるでしょう。
| 活用方法 | メリット | 適したケース |
|---|---|---|
| 主幹の更新 | 株全体をリセットして若返らせる | 主幹が老化・病害虫で衰退したとき |
| 株立ち仕立て | ナチュラルでボリュームある樹形 | 庭のデザインを変更したいとき |
| 挿し木 | 同じ性質の苗を増やせる | 予備の苗が欲しい、プレゼントしたいとき |
ひこばえの発生をコントロールする日常の管理ポイント

ひこばえを剪定してスッキリさせても、しばらくするとまた新しい芽が出てきて、いたちごっこになってしまうことがあります。ひこばえが過剰に発生するのには、必ず理由があります。ここでは、ひこばえの発生をできるだけ抑え、オリーブを落ち着いた状態で育てるためのヒントを探っていきましょう。
強剪定によるストレスを避けて樹勢を安定させる
ひこばえが爆発的に増える原因の一つに、「一度に枝を切りすぎる強剪定(きょうせんてい)」があります。オリーブは枝葉を失うと、それを補うために急いで新しい芽を吹こうとします。特に上部の枝をバッサリと切り落としすぎると、行き場を失った成長エネルギーが根元に集中し、大量のひこばえとなって現れるのです。
これを防ぐためには、毎年少しずつ、計画的に枝を間引く「弱剪定」を心がけることが大切です。一度に全体の3割以上の枝を落とすと、木は強いストレスを感じてしまいます。毎年のメンテナンスとして、混み合った箇所や不要な枝を少しずつ整理していけば、木はパニックを起こさず、根元の芽吹きも穏やかになります。
また、剪定の際には「残す枝」を意識することも重要です。木全体にバランスよく葉を残すことで、エネルギーが分散され、ひこばえだけに栄養が偏るのを防ぐことができます。オリーブとの対話を楽しみながら、急がずゆっくりと樹形を整えていくことが、結果としてひこばえ管理の手間を減らす近道となります。
根詰まりや水切れなど土壌環境のストレス対策
鉢植えでオリーブを育てている場合、鉢の中が根でいっぱいになる「根詰まり」や、極端な「水切れ」がひこばえを誘発することがあります。これらの環境ストレスは、木にとっての「生存危機」です。生命の危険を感じたオリーブは、万が一に備えて根元から新しいシュート(枝)を出し、生き残りを図ろうとする性質があるためです。
特に鉢植えの場合は、2〜3年に一度の植え替えを忘れずに行いましょう。古い根を整理して新しい土に入れ替えてあげることで、木はリフレッシュされ、過剰な自衛反応(ひこばえの発生)を抑えることができます。また、水やりも「乾いたらたっぷりと」という基本を守り、根に適切な酸素と水分を供給し続けることが大切です。
肥料の与えすぎにも注意が必要です。特に窒素分の多い肥料を大量に与えると、枝葉の成長が異常に促され、ひこばえが出やすくなる傾向があります。適量を守り、オリーブがゆったりと成長できる環境を整えてあげましょう。土壌環境が安定すれば、木は無駄なエネルギーを使わなくなり、落ち着いた樹勢を保てるようになります。
品種や個体差に合わせた見守り方のポイント
オリーブには数百種類もの品種があり、中にはもともとひこばえが出やすい性質を持つものもあります。例えば、成長が非常に旺盛な品種や、ブッシュ状(茂み状)に育ちやすい品種は、どれだけ管理を徹底していてもひこばえが頻繁に出てくることがあります。これはその木の「個性」と捉える必要があります。
もし自分の育てているオリーブが、他の木に比べてひこばえが多いと感じても、あまり神経質になりすぎないでください。まずはその木が健康に葉を茂らせているかをチェックしましょう。葉色が良く、毎年少しずつ成長しているのであれば、単に活力がある証拠です。その場合は「この子は元気なんだな」と受け入れ、見つけた時にこまめに摘み取る作業をルーティンに組み込んでしまいましょう。
一方で、特定の場所からだけ繰り返しひこばえが出る場合は、その付近の樹皮が傷んでいたり、日当たりが偏っていたりする可能性もあります。木全体のバランスを観察し、光が均等に当たるように鉢を回したり、日照を遮る障害物を取り除いたりすることで、発生箇所が改善されることもあります。一株一株の個性に合わせた、気長な付き合い方が大切です。
オリーブのひこばえを残す・切るの正しい判断で健康に育てるまとめ
オリーブのひこばえを「残す」か「切る」かという問題は、基本的には「切る」のが正解です。ひこばえを放置せず適切に処理することは、栄養を主幹へ集中させ、樹形を美しく保つだけでなく、天敵であるオリーブアナアキゾウムシの被害を未然に防ぐという極めて重要な意味を持っています。日頃から根元をスッキリとさせておくことが、オリーブの寿命を延ばすことにつながります。
ただし、主幹が弱ったときの「世代交代」や、よりナチュラルな「株立ち仕立て」を目指す場合には、ひこばえは欠かせない存在となります。状況に応じてひこばえを「予備の命」として活用する柔軟さも、オリーブ栽培の楽しさの一つと言えるでしょう。切り取った枝を挿し木にして、新しい命を育むのも素敵なアイデアです。
大切なのは、ひこばえが出た理由を考え、自分のオリーブをどのような姿に育て上げたいかをイメージすることです。春先の剪定時期はもちろん、日々の水やりや観察の中で足元をチェックする習慣を身につけましょう。正しい知識を持ってひこばえと向き合うことで、あなたのオリーブはより健やかに、そして美しく成長し続けてくれるはずです。



