お庭の目隠しや境界線として、おしゃれで機能的な生垣を作りたいと考えている方は多いのではないでしょうか。数ある植物の中でも、シルバーグリーンの葉が美しいオリーブ、特に「チプレッシーノ」という品種は生垣作りに非常に適しています。イタリア産まれのこの品種は、その特性から「生垣のためにあるオリーブ」と言っても過言ではありません。
この記事では、オリーブのチプレッシーノを生垣にするための作り方を、土壌の準備から植え付け、そして密度を上げるための剪定方法まで詳しく解説します。洋風の住宅はもちろん、モダンな和風住宅にもマッチするオリーブの生垣は、お庭の雰囲気を一気に格上げしてくれます。理想のプライベート空間を作るための第一歩を、ここから一緒に踏み出しましょう。
オリーブのチプレッシーノが生垣作りに最適な3つの理由

オリーブには数百もの品種がありますが、その中でもチプレッシーノ(シプレッシーノ)は生垣に最も適した品種の一つとして知られています。なぜこの品種が選ばれるのか、その特徴を知ることで、失敗のない生垣作りが可能になります。まずはチプレッシーノが持つ優れた性質について、具体的に見ていきましょう。
直立性の高い樹形で横に広がりにくい
オリーブの樹形には、大きく分けて「直立型」と「開帳型」の2種類があります。チプレッシーノは代表的な直立型の品種であり、枝が上に向かって伸びようとする性質が非常に強いのが特徴です。そのため、狭いスペースでも横に広がりすぎず、スマートな生垣を作ることができます。
一般的なオリーブは放っておくと横に枝を伸ばし、隣家にはみ出してしまうことがありますが、チプレッシーノはその心配が比較的少ないです。高さを出しつつもスリムな形状を維持しやすいため、住宅が隣接している都市部の庭や、アプローチの横に設置する目隠しとして最適です。この「上に伸びる力」を活かすことが、美しい生垣を作る秘訣となります。
風に強く丈夫で成長が早い
チプレッシーノという名前は、イタリア語で「イトスギ(サイプレス)」に似ていることから名付けられました。イトスギのように風をいなす柔軟性と強さを持っており、オリーブの中でも比較的耐風性が強いことで知られています。生垣は家の外側に配置されることが多いため、強風に耐えられる丈夫さは重要なポイントです。
また、チプレッシーノは成長が比較的早く、苗木を植えてから生垣として機能するまでの期間が短いのもメリットです。若木のうちから勢いよく伸びるため、早く目隠しとしての効果を得たい方におすすめです。病害虫にも比較的強く、初心者の方でも育てやすいという点も、生垣という広範囲の植栽においては大きな安心材料となります。
銀色の葉が密に茂り目隠し効果が高い
生垣の最大の目的は「外からの視線を遮ること」です。チプレッシーノは葉の密度が非常に高くなりやすく、適切な剪定を行うことで隙間のないグリーンの壁を作ることができます。葉の裏側が銀色に輝くシルバーグリーンの色彩は、圧迫感を感じさせずにおしゃれな雰囲気を演出してくれます。
常緑樹であるため、冬場でも葉が落ちて透けてしまうことがありません。一年中、安定した目隠し効果を発揮してくれるのは生垣として大きな強みです。また、葉の形もやや尖った楕円形で美しく、風に揺れるたびにキラキラと輝く様子は、庭を明るく彩るアクセントとしての役割も十分に果たしてくれます。
生垣作りの前に準備すべき道具と栽培環境

オリーブのチプレッシーノで生垣を作る際、いきなり苗を植えるのではなく、事前の準備が成功の鍵を握ります。オリーブは特定の土壌環境を好む植物であるため、最初の手間を惜しまないことが、その後の成長スピードや葉の密度に大きく影響します。まずは必要な道具と、理想的な土作りについて確認していきましょう。
適切な土壌作りと排水性の確保
オリーブ栽培において最も重要なのが、排水性と通気性の良い土壌を作ることです。オリーブは過湿(根が常に濡れている状態)を嫌うため、水はけの悪い場所に植えると根腐れを起こしやすくなります。生垣を作る場所の土が粘土質の場合は、あらかじめ腐葉土やパーライトを混ぜ込んで、ふかふかの土にしておきましょう。
また、オリーブは酸性土壌を嫌い、弱アルカリ性を好みます。日本の土壌は雨の影響で酸性に傾きやすいため、植え付けの2週間ほど前に苦土石灰(くどせっかい)を混ぜて酸度を調整しておくのが理想的です。土壌のpHを6.5〜7.0程度に調整することで、根が健康に育ち、チプレッシーノ特有の鮮やかな葉色を維持することができます。
元気な苗木の選び方と購入のポイント
生垣を作るには複数の苗木を並べて植えるため、できるだけ成長度合いが揃った苗を選ぶことが大切です。チプレッシーノは人気品種なので園芸店でも入手しやすいですが、選ぶ際は「主幹(一番太い幹)」がまっすぐ伸びていて、葉にツヤがあり、病害虫の跡がないものを選びましょう。
生垣として早く形を作りたい場合は、ある程度高さのある苗(1メートル前後)を購入するのが近道です。しかし、コストを抑えたい場合は小さな苗から育てることも可能です。購入時には、同じチプレッシーノでも生産者によって育て方が異なる場合があるため、複数の店舗を回るか、信頼できるネットショップでまとめ買いをすることをおすすめします。
生垣作りに必要な資材と支柱
チプレッシーノの苗木以外に、生垣作りには欠かせない資材があります。特に重要なのが「支柱」です。チプレッシーノは直立する性質がありますが、若木のうちは幹が細く、強風で傾いたり根が揺さぶられたりしやすいです。根をしっかりと定着させるために、丈夫な支柱を用意しましょう。
【生垣作りに必要なアイテム】
・オリーブ(チプレッシーノ)の苗木(必要本数)
・苦土石灰(土壌の酸度調整用)
・オリーブ専用肥料または緩効性化成肥料
・腐葉土やパーライト(排水性向上のため)
・二段支柱や横木付きの支柱(生垣のラインを作るため)
特に生垣のように複数の木を直線状に植える場合は、個別の支柱だけでなく、それらを横につなぐ「布掛支柱(ぬのがけしちゅう)」を作ると、木がまっすぐ揃い、プロのような仕上がりになります。
オリーブのチプレッシーノを植え付ける具体的な手順

準備が整ったら、いよいよ植え付け作業に入ります。生垣作りにおいて最も悩むのが「どのくらいの間隔で植えればいいのか」という点ではないでしょうか。ここでは、目隠し効果を最大化しつつ、木が健やかに育つための具体的な植え付け方法をステップごとに解説します。
理想的な株間と配置の決め方
チプレッシーノを並べて植える際、株と株の間隔(株間)は50cmから80cm程度が目安となります。早く隙間を埋めて密な生垣にしたい場合は50cm間隔、将来的に大きく育てたい場合や、コストを抑えたい場合は80cm間隔にすると良いでしょう。これ以上詰めすぎると、根が競合してしまい、十分に栄養が行き渡らなくなる恐れがあります。
まず、生垣を作りたい場所に紐を張り、直線を出し。その紐に沿って植える位置に印をつけます。このとき、家の壁やフェンスからは少なくとも50cm程度は離して配置するようにしてください。木の成長に伴い幹も太くなり、枝も多少は広がるため、メンテナンス用のスペースを確保しておくことが大切です。
苗木の植え込みと水やりのコツ
配置が決まったら、いよいよ植え付けです。苗木の鉢よりも一回りから二回り大きな穴を掘り、底に元肥(もとごえ)として緩効性肥料を混ぜた土を少し入れます。その上に肥料に直接根が触れないよう薄く土を被せ、苗を置きます。このとき、苗の向きを確認し、一番美しい面を外側に向けて配置しましょう。
土を戻す際は、接ぎ木苗の場合は接ぎ木部分が土に隠れないよう注意してください。土を被せたら、足で軽く踏んで根と土を密着させます。植え付け直後はバケツ一杯分くらいの水をたっぷりと与え、根の隙間に土を流し込むようにします。この「水極め(みずぎめ)」という作業が、苗木の定着を早める重要なポイントです。
生垣を支える支柱の設置方法
植え付けが終わったら、すぐに支柱を設置します。チプレッシーノは上に伸びる力が強いため、支柱がないと頭が重くなり、風で倒れてしまうことがあります。個別の竹支柱を幹に添わせ、麻紐で「8の字」を描くように緩めに固定します。強く締めすぎると、幹が太くなったときに食い込んでしまうので注意しましょう。
複数の苗木を植えた場合は、苗木同士を横方向につなぐ横木を渡すと、生垣としての強度が飛躍的に高まります。これにより、全ての苗が同じ角度でまっすぐ伸び、見た目にも整った美しい生垣に仕上がります。支柱は木の根がしっかり張り、自立できるようになるまで(2〜3年程度)は設置したままにしておくのが基本です。
チプレッシーノは成長すると主幹がしっかりしてきますが、若い枝はしなやかで折れやすい性質があります。台風シーズンの前には、支柱の紐が緩んでいないか必ずチェックしましょう。
密度の高い生垣に育てるための剪定と手入れ

苗木を植えただけでは、まだ理想的な生垣とは言えません。チプレッシーノの特性を活かしつつ、スカスカにならない「密度の高い生垣」にするためには、定期的なメンテナンスが不可欠です。ここでは、ボリュームのある美しい壁を作るための剪定(せんてい)テクニックと日常の管理について詳しくお伝えします。
芯止めで高さをコントロールする
チプレッシーノを放置すると、どんどん上に伸びて数メートルの高さになってしまいます。生垣として理想の高さ(例えば1.5m〜2mなど)に達したら、一番上の芽を切り取る「芯止め(しんどめ)」を行いましょう。主幹の成長を止めることで、栄養が横枝に回るようになり、生垣の密度が増していきます。
芯止めを行う時期は、成長が落ち着く秋頃や、新芽が動き出す前の春先が適しています。一度高さを決めれば、その後の管理が非常に楽になります。ただし、一度芯を止めると主軸の高さはそれ以上伸びにくくなるため、十分に目標の高さまで育ってから行うのがコツです。
脇芽を増やすためのピンチ(摘芯)
生垣の目隠し効果を高めるには、枝数を増やすことが重要です。そのためにおすすめなのが、枝先を少しだけ切る「ピンチ(摘芯)」です。伸びてきた枝の先端を数センチカットすると、その下の節から2〜3本の新しい脇芽が出てきます。これを繰り返すことで、枝がどんどん分岐し、葉が密に茂るようになります。
チプレッシーノは剪定に強く、どこを切っても新芽が出やすい品種です。特に春から夏にかけての成長期にこまめにピンチを行うことで、短期間でボリュームのある生垣へと変化していきます。「切れば切るほど密になる」という意識で、理想の形をイメージしながらハサミを入れていきましょう。
季節ごとの施肥と水やりの管理
健康で青々とした葉を維持するためには、適切な栄養補給が必要です。オリーブには、年に3回の肥料(元肥・追肥・お礼肥)を与えるのが一般的です。特に生垣の場合は、多くの木を植えているため肥料切れを起こしやすいです。2月から3月の春先に芽吹きを助ける肥料を与え、6月と10月にも少量ずつ追肥を行いましょう。
水やりについては、地植えの場合は根が張ってしまえば雨水だけで十分ですが、植え付けから2年目くらいまでは土の表面が乾いたらたっぷりと与えてください。特に夏場の乾燥は、葉を落とす原因になります。オリーブは乾燥に強いイメージがありますが、若木のうちは水切れに注意することで、成長スピードを落とさずに育てることができます。
オリーブの生垣を長く美しく保つためのポイント

美しいチプレッシーノの生垣が完成したら、次はその状態を長く維持することが目標になります。長く育てていると、どうしても病害虫の悩みや、環境の変化によるトラブルが発生することがあります。美しい銀色の壁を守るために、知っておきたい予防策と、生垣ならではの楽しみ方をご紹介します。
病害虫対策と早期発見のコツ
オリーブ最大の天敵は「オリーブゾウムシ」です。この虫は幹の中に卵を産み、幼虫が幹の中を食い荒らして木を枯らしてしまいます。生垣は本数が多いため、一本が被害に遭うと周囲にも広がりやすいのが難点です。幹の根元に「木くず(おがくず状の糞)」が落ちていないか、こまめにチェックしてください。
また、風通しが悪くなると「ハマキムシ」や「カイガラムシ」が発生しやすくなります。枝が混み合いすぎると害虫の温床になるため、生垣の内側の細い枝や枯れ枝は定期的に間引き、風が通り抜けるように整えましょう。早期発見・早期対応が、大切な生垣を全滅させないための唯一の方法です。
台風や強風から生垣を守る対策
チプレッシーノは耐風性が高い方ですが、生垣全体で風を受ける面積が広いため、大型の台風時には大きな負荷がかかります。数年経って木が太くなってきたとしても、支柱が腐食していないか、紐が切れていないかを定期的に確認しましょう。特に土が緩んでいる大雨の後の強風には注意が必要です。
もし強風で木が傾いてしまった場合は、早めに土を寄せ、支柱で固定し直してください。そのまま放置すると根が傷み、成長が止まってしまうことがあります。生垣の美しさを維持するためには、木自体の健康だけでなく、それらを支える土台のメンテナンスも同じくらい大切です。
受粉樹を混ぜて実を楽しむ工夫
生垣としてチプレッシーノを植える際、もし「オリーブの実も収穫したい」と考えているなら、少し工夫が必要です。オリーブは自分の花粉では実をつけにくい「自家不結実性」という性質を持っています。チプレッシーノだけでも多少は実がつきますが、より多くの収穫を望むなら、異なる品種を1〜2本混ぜて植えるのがおすすめです。
例えば、生垣の端のほうに「ルッカ」や「フラントイオ」といった異なる品種を混ぜておくと、受粉の成功率が高まります。チプレッシーノは花粉が多いため、他の品種の受粉樹としても優秀です。生垣という実用的な機能に加えて、秋には自家製のオリーブの実を収穫して塩漬けにする、そんな楽しみも追加してみてはいかがでしょうか。
オリーブのチプレッシーノで作る生垣の作り方と成功のポイントまとめ
オリーブのチプレッシーノを使った生垣は、その直立性の高さと美しいシルバーグリーンの葉により、お庭を特別な空間に変えてくれます。最後に、失敗しない生垣作りの重要ポイントをおさらいしましょう。
まず、チプレッシーノを選ぶこと自体が生垣作りの大きなアドバンテージです。横に広がりにくいため、最小限の剪定で整った形を維持できます。植え付けの際は、水はけを第一に考え、苦土石灰で土壌を調整すること、そして50cm〜80cmの間隔を守ることが大切です。
植え付け後は、支柱でしっかりと固定し、成長に合わせて「芯止め」と「ピンチ」を行いましょう。この剪定作業こそが、スカスカの枝を密な目隠しへと育てる魔法の手順となります。病害虫、特にオリーブゾウムシには注意が必要ですが、日々の観察を怠らなければ、長く健やかな生垣を楽しむことができます。
オリーブの生垣は、年月が経つほどに幹が太くなり、風格を増していきます。あなたもぜひ、チプレッシーノの苗木を並べ、風に揺れる銀色の美しい壁作りをスタートさせてみてください。きっと、毎朝お庭を見るのが楽しみになるはずです。


