庭にオリーブの木があると、収穫した実を自家製の塩漬けにして楽しみたいと考える方も多いのではないでしょうか。しかし、いざ実がなってみると「どの品種でも同じようにおいしく作れるの?」という疑問が湧いてくるものです。実は、オリーブには数百もの品種があり、それぞれ実の大きさや食感、含まれる油分の量が大きく異なります。
せっ分け自家製で作るなら、スーパーで売られているものよりもおいしい一品を目指したいですよね。この記事では、オリーブの塩漬けに向く品種の具体的な特徴や、初心者でも育てやすく加工しやすい種類を分かりやすくご紹介します。自分好みの食感や味に仕上がる最適な品種を見つけて、家庭でのオリーブライフをより豊かなものにしていきましょう。
オリーブの塩漬けに向く品種選びの基準とは

自家製で美味しいオリーブの塩漬けを作るためには、まず「どの品種の実を使うか」が非常に重要になります。すべてのオリーブが塩漬けに適しているわけではなく、品種によっては実が小さすぎたり、加工しても食感が損なわれてしまったりすることがあるからです。まずは選ぶ際の基本的なポイントを押さえておきましょう。
肉厚で種が小さい品種が理想的
塩漬けにして食べる「テーブルオリーブ」として最も好まれるのは、果肉が厚くて食べ応えがあり、相対的に種が小さい品種です。口に入れたときに、しっかりとした果肉の食感を楽しめることが美味しさの決め手となります。種が大きすぎて果肉が薄い品種だと、食べられる部分が少なく物足りなさを感じてしまいます。
また、果肉の質も重要です。繊維質が多すぎず、噛んだときに心地よい弾力があるものが塩漬けに適しています。特に、マンザニロのような「リンゴに似た形」の品種は、その丸々とした形状から肉厚な個体が多く、加工後の満足度が非常に高いことで知られています。まずは「肉厚さ」を第一の基準として考えてみてください。
肉厚な品種は渋抜きの工程でも形が崩れにくいため、初心者の方でも扱いやすいというメリットがあります。初めて自家製に挑戦する場合は、まず実が大きくなりやすい品種を選ぶことが、成功への近道と言えるでしょう。見た目のボリューム感は、食卓に並べた際の彩りとしても大きな魅力になります。
果実の形と食べやすさの関係
オリーブの実の形は、丸型、卵型、三日月型など品種によって千差万別です。塩漬けにした際の食べやすさを考えるなら、丸みのある形や、なだらかな曲線を持つ品種がおすすめです。形が整っていると、塩水が均一に浸透しやすくなり、味のムラを防ぐことができるからです。
特に、三日月のような形をした「ルッカ」などは非常に美しい見た目をしていますが、加工の際にはその形状ゆえに実が傷つきやすい側面もあります。一方で、マンザニロのような球体に近い形は、収穫時や洗浄時に傷がつきにくく、仕上がりの美しさを保ちやすいのが特徴です。
また、口に含んだ際の外皮の厚みも食感に影響します。皮が薄すぎる品種は加工中に破れてしまうことがあり、逆に厚すぎると口に残ってしまいます。塩漬けに向くとされる品種は、この「皮の強さと食感」のバランスが絶妙に保たれているものが多いのです。
油分(オイル含有率)が低いものを選ぶ理由
オリーブにはオイルを絞るための「オイル専用種」と、実を食べるための「テーブルオリーブ用」があります。塩漬けに向く品種は、一般的にオイルの含有率が低めから中程度のものです。油分が多すぎる品種を塩漬けにすると、保存中に油が酸化して風味が落ちたり、食べたときにしつこさを感じたりすることがあります。
オイル専用種は実が小さく、油分を凝縮させる性質を持っているため、塩漬けにすると独特の苦みやクセが強く残ってしまう傾向があります。それに対してテーブルオリーブ用の品種は、果肉の水分と糖分のバランスが良く、塩水に漬けることでフルーティーな香りが引き立ちやすくなっています。
もちろん、オイルと塩漬けの両方に使える「兼用種」も存在します。例えば日本の小豆島で広く栽培されている「ミッション」などがその代表例です。兼用種は使い勝手が良く便利ですが、より専門的な「塩漬けとしての美味しさ」を追求するのであれば、食用としての評価が高い品種を選ぶのが賢明です。
世界中で愛される代表的な塩漬け品種

具体的にどのような品種が塩漬けに適しているのか、世界中で高い評価を受けている代表的な品種を見ていきましょう。これらの品種は、日本国内の園芸店でも入手しやすく、家庭菜園で育てる際にも有力な候補となります。それぞれの個性を知ることで、自分好みのオリーブを見つけやすくなります。
スペインの至宝「マンザニロ」
世界で最も有名なテーブルオリーブ用品種といえば、スペイン原産の「マンザニロ」です。スペイン語で「小さなリンゴ」を意味するその名の通り、可愛らしい丸い実をつけるのが特徴です。果肉が非常に柔らかく、きめ細かい食感は、まさに塩漬けのためにあるような品種と言っても過言ではありません。
マンザニロは種が小さく、実の大部分が肉厚な果肉で構成されています。そのため、一口噛んだ瞬間にオリーブ特有の旨味が口いっぱいに広がります。また、渋抜きが比較的スムーズに進む品種であるため、家庭での加工のハードルが低い点も大きな魅力です。初心者の方が最初に選ぶ品種として、最も推奨されるものの一つです。
ただし、マンザニロは炭疽病(たんそびょう)という病気に少し弱い面があるため、栽培時には風通しを良くするなどの工夫が必要です。しかし、その手間に見合うだけの素晴らしい塩漬けが出来上がります。その食感の良さは、一度食べると他の品種では満足できなくなるほどです。
日本で最も普及している「ミッション」
日本、特に小豆島で古くから親しまれている「ミッション」は、アメリカ合衆国カリフォルニア州原産の品種です。非常に直立した樹形で育てやすく、日本の気候にもよく馴染みます。実は卵型で美しく、オイル用としても優秀ですが、「新漬け」と呼ばれる塩漬けオリーブとして日本では絶大な人気を誇ります。
ミッションの果肉は、マンザニロに比べると少し硬めで、しっかりとした歯ごたえがあるのが特徴です。この「カリッ」とした食感を好む日本人は多く、おつまみやサラダのトッピングとしても非常に重宝されます。香りが高く、上品な味わいに仕上がるため、ギフト用の高級塩漬けとしてもよく利用されています。
栽培面でも、ミッションは非常に強健で寒さにも比較的強いため、家庭園芸において失敗が少ない品種と言えます。自家製で塩漬けを作りたいけれど、育てるのが難しそうだと感じている方には、まずミッションから始めるのが安心でしょう。収穫時期によって、若い実の爽やかさと完熟実のコクの両方を楽しめます。
食べ応え抜群の高級種「アスコラーナ」
イタリアのマルケ州原産の「アスコラーナ」は、世界中のオリーブ愛好家から「最高級のテーブルオリーブ」として賞賛される品種です。最大の特徴は何といってもそのサイズで、一般的なオリーブの実の数倍にもなる大粒の実をつけます。その姿は圧巻で、一粒でも十分な存在感を放ちます。
果肉は非常に厚く、それでいてふんわりとした柔らかさがあります。イタリアではこのアスコラーナの中に肉などを詰めて揚げる「アスコラーナ・リピエーナ」という料理が有名ですが、シンプルな塩漬けにしてもそのリッチな味わいは格別です。フルーティーで芳醇な香りが強く、贅沢な気分を味わいたい時にぴったりの品種です。
ただ、アスコラーナは実が柔らかいため、収穫や運搬の際に傷がつきやすいという繊細な一面もあります。自家栽培であれば、収穫してすぐに加工できるため、この品種の良さを最大限に引き出すことができます。市場にはあまり出回らない貴重な大粒オリーブを味わえるのは、育てている人だけの特権です。
独特の三日月形が美しい「ルッカ」
「ルッカ」はイタリア原産の品種で、主にオイル用として知られていますが、実は家庭での塩漬けにも非常に適しています。実は小ぶりから中ぶりですが、三日月のような独特の形をしており、見た目がとても愛らしいのが特徴です。成長が早く、樹勢が強いため、庭木としての観賞価値も非常に高い品種です。
ルッカの実は油分を豊富に含んでいますが、その分、塩漬けにすると非常にまろやかでコクのある味わいになります。マンザニロやミッションとはまた違った、ナッツのような風味を感じることができ、深みのあるオリーブを好む方におすすめです。少し小ぶりな実が、パスタ料理や煮込み料理のアクセントとしても使いやすいサイズ感です。
栽培においては、ルッカは病害虫に強く、1本でも比較的実がつきやすいという性質を持っています。オリーブは通常、2品種以上植えないと実がつきにくい植物ですが、ルッカはその点でも扱いやすく、スペースの限られた庭でも収穫を楽しめる可能性が高い品種と言えるでしょう。
品種ごとの収穫タイミングと加工のコツ

オリーブの塩漬けに向く品種を選んだら、次に重要になるのが「いつ収穫するか」というタイミングです。オリーブは熟成度合いによって色が変わり、それに伴い風味や食感も劇的に変化します。自分が作りたい塩漬けのイメージに合わせて、最適な収穫時期を見極めましょう。
新漬けに適したグリーンの段階
日本で最も親しまれている鮮やかな緑色の塩漬け、いわゆる「新漬け」を作るなら、実が最大サイズまで大きくなり、色が明るい黄緑色になった段階で収穫します。この時期の実は果肉がしっかりと硬く、オリーブ特有のフレッシュで爽やかな香りを楽しむことができます。
新漬け用の収穫タイミングは非常に短く、わずか数週間程度です。色が緑から紫に変わり始めると、新漬け特有のパリッとした食感は失われてしまいます。そのため、毎日実の状態を観察し、一番良い状態を逃さずに収穫することが大切です。早すぎると実が太っておらず、遅すぎると柔らかくなってしまいます。
収穫したてのグリーンオリーブは非常に強い渋みを持っていますが、適切な工程で渋抜きを行うことで、驚くほどフルーティーで甘みさえ感じる仕上がりになります。この鮮烈な味わいは、保存のきく市販の瓶詰めでは決して味わえない、自家製ならではの醍醐味と言えるでしょう。
完熟させた黒オリーブの塩漬け
一方で、実を樹上で熟成させ、色が濃い紫から黒に変わった「黒オリーブ」も塩漬けにすることができます。黒く熟した実は、グリーンオリーブに比べて油分が増し、果肉が非常に柔らかくなっています。味わいは濃厚でコクがあり、ワインのお供やパンの具材として最高の相性を見せてくれます。
黒オリーブの塩漬けは、新漬けのような「パリッ」とした食感ではなく、とろけるような滑らかな食感が特徴です。渋みもグリーンオリーブより自然に抜けているため、苛性ソーダを使わない「塩水漬け」などの時間をかけた加工法にも向いています。じっくりと発酵させることで、深みのある複雑な味わいへと変化していきます。
ただし、完熟した実は非常に傷つきやすく、鳥に狙われやすいという難点もあります。また、熟しすぎると実が地面に落ちてしまうため、色が黒ずんできたらタイミングを逃さず収穫することが重要です。一つの木からグリーンとブラック、両方のタイミングで収穫して、味わいの違いを比べるのも楽しいですね。
傷をつけない丁寧な手摘みの重要性
どの品種、どのタイミングで収穫する場合でも、共通して言える最も大切なコツは「実に傷をつけないこと」です。オリーブの実は非常に繊細で、指先で少し強く押したり、枝にぶつかったりしただけで、そこから変色が始まってしまいます。塩漬けにした際、その傷跡が黒い斑点となって残り、見た目も食感も損ねてしまうのです。
収穫する際は、一粒ずつ手で丁寧に摘み取る「手摘み」が基本です。高い場所の実は脚立を使い、決して枝を揺すって落とすようなことはしないでください。また、収穫した実を入れる容器の底に柔らかい布を敷くなどして、実同士の重みや衝撃を和らげる工夫も効果的です。
丁寧な収穫は、その後の渋抜き工程の成功率にも大きく関わります。傷のない綺麗な実を使うことで、渋抜き液が均一に浸透し、色鮮やかで美しい塩漬けを完成させることができます。一見手間に思える細かな配慮が、最終的なクオリティを左右する大きなポイントになるのです。
自宅で栽培して収穫を楽しむためのポイント

自分で収穫したオリーブで塩漬けを作るためには、木を元気に育てることが前提となります。オリーブは比較的丈夫で育てやすい植物ですが、実をたくさん、そして大きく育てるためにはいくつか押さえておくべきポイントがあります。美味しい実を収穫するための栽培のコツを確認しておきましょう。
異なる品種を2本以上植えるのが基本
オリーブを育てる上で最も注意が必要なのが「自家不結実性(じかふけつじつせい)」という性質です。これは、自分の花粉では実がつきにくい、あるいは全くつかないという性質のことです。そのため、実を収穫して塩漬けを楽しみたいのであれば、必ず異なる品種を2本以上並べて植える必要があります。
例えば「マンザニロ」だけを2本植えても、実はつきにくいのです。「マンザニロとミッション」というように、種類の違う木を組み合わせることで、受粉がスムーズに行われ、たくさんの実がなるようになります。近くに別の家のオリーブがあれば受粉することもありますが、確実を期すなら自分の庭に2種用意するのがベストです。
組み合わせる品種に迷ったときは、開花時期が近いものを選ぶのがポイントです。先ほど紹介したミッションやルッカ、マンザニロなどは互いに相性が良く、受粉樹としても優秀な組み合わせになります。庭のスペースが限られている場合は、1つの鉢に2品種を接ぎ木している苗などを探してみるのも一つの手です。
日本の気候に適した強健な品種選び
日本は四季の変化がはっきりしており、夏は高温多湿、冬は地域によって氷点下まで下がります。そのため、地域の気候に合った品種を選ぶことも重要です。例えば、寒さが厳しい地域であれば、耐寒性の強い「ミッション」や「ルッカ」が適しています。これらの品種は零下10度程度まで耐えられるとされており、東北地方の一部などでも栽培が可能です。
逆に、暖かく湿気が多い地域では、風通しが悪くなると病気が発生しやすくなります。スペイン原産のマンザニロなどは少しデリケートな部分があるため、日当たりと風通しの確保がより重要になります。地植えにする場合は、その場所の環境をよく確認し、苗を選ぶ際に店員さんに相談してみるのも良いでしょう。
また、鉢植えで育てる場合は、根詰まりに注意が必要です。オリーブは成長が早いため、2~3年に一度は一回り大きな鉢に植え替えを行うことで、元気な状態を維持し、実をつけ続けることができます。鉢植えであれば、冬の寒さが厳しい時期だけ軒下に移動させるなどの対策が取れるため、より幅広い品種を楽しむことが可能です。
日当たりと水はけを重視した管理
オリーブが最も好む環境は「日光がよく当たり、風通しが良く、水はけの良い場所」です。地中海沿岸の温暖で乾燥した気候が原産であるため、常に土が湿っている状態は苦手です。水はけが悪いと根腐れを起こしやすく、木の勢いが弱まって実がならなくなってしまう原因となります。
水やりは「土の表面が乾いたらたっぷりと」が基本です。特に、花が咲く春から実が大きくなる秋にかけては水不足にならないよう注意しましょう。乾燥に強いイメージがあるオリーブですが、実を育てるためには一定の水分が必要です。極端に乾燥させてしまうと、せっかくついた実が落ちてしまうこともあります。
肥料についても、年に3回(春、初夏、秋)ほど与えるのが理想的です。特に春の芽出しの時期に与える肥料は、その年の花つきと実の充実に大きく影響します。日々の観察を怠らず、葉の色が薄くなっていないか、虫がついていないかをチェックすることで、立派な塩漬け用の実を収穫できる確率が高まります。
収穫したオリーブをおいしく塩漬けにする手順

いよいよ収穫した実を加工する段階です。オリーブをそのまま食べると、驚くほど強烈な苦みがあります。この苦み成分(オレウロペイン)を抜く工程が、美味しい塩漬けを作るための最も重要な作業になります。代表的な手法をいくつかご紹介しますので、自分に合った方法で挑戦してみてください。
まずは「渋抜き」の工程が欠かせない
オリーブの加工において、避けて通れないのが「渋抜き」です。この工程を行わずに塩水に漬けても、苦くて食べられるようにはなりません。渋抜きの方法には大きく分けて、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)を使用する化学的な方法と、水や塩水だけを使い時間をかける自然な方法の2種類があります。
最も一般的で、短期間で綺麗な色に仕上がるのが苛性ソーダを使った方法です。これにより、わずか半日ほどで渋を完全に抜くことができます。一方で、薬品を使うことに抵抗がある方や、より素材本来の味を活かしたい方は、時間はかかりますが水にさらす方法を選びます。どちらの方法を選ぶにしても、丁寧な作業が成功の鍵となります。
渋が抜けたかどうかは、実を少し切って舌先で触れてみることで確認します。苦みを感じなくなったら次の工程へ進みます。この見極めが最初は難しく感じるかもしれませんが、何度か経験するうちに、オリーブの色や感触で判断できるようになっていきます。手作りのプロセスそのものを楽しむ心の余裕が大切です。
苛性ソーダを使った伝統的な渋抜きの方法
日本の「新漬け」の標準的な作り方は、約1.8%~2%程度の苛性ソーダ水溶液に実を浸す方法です。この工程により、オリーブの鮮やかな緑色を保持したまま、短時間で渋を抜くことができます。浸漬時間は品種や実の大きさによって異なりますが、およそ8時間から15時間程度が目安となります。
【苛性ソーダ使用時の注意点】
苛性ソーダは強アルカリ性の薬品で、取り扱いには十分な注意が必要です。必ずゴム手袋、保護メガネ、マスクを着用し、換気の良い場所で作業を行ってください。また、アルミ製の容器は腐食するため、必ずプラスチック製やガラス製の容器を使用しましょう。
渋が抜けたら、次は「水替え」を行います。数日間、日に何度も水を取り替えて、実の中に入り込んだ苛性ソーダ成分を完全に洗い流します。水の濁りがなくなり、液が中性になれば準備完了です。この丁寧なすすぎ作業が、雑味のないクリアな味わいの塩漬けを作るポイントです。
最後に、徐々に濃度を上げた塩水に漬け込んでいきます。最初は2%程度の低い濃度から始め、数日かけて4%~6%程度まで上げると、味が均一に馴染みます。いきなり濃い塩水に入れると、実がシワシワになってしまう「塩縮(えんしゅく)」が起きるため、段階を踏むことが重要です。
時間はかかるが自然な味わいの塩水漬け
薬品を使わずに渋を抜きたい場合は、完熟した黒オリーブを使い、塩水だけでゆっくりと時間をかけて加工する方法があります。これは地中海沿岸で古くから行われている伝統的な手法で、乳酸発酵を伴うことで深みのある味わいが生まれます。渋が抜けるまでには数ヶ月、長ければ半年以上の時間が必要です。
具体的には、実の表面に数箇所切り込みを入れ、毎日水を取り替えながら1〜2週間ほどさらした後、10%程度の濃いめの塩水に漬け込みます。常温で保存しながら、じっくりと渋が抜けるのを待ちます。切り込みを入れることで渋が出やすくなりますが、その分実は柔らかくなりやすいため、時々状態をチェックしましょう。
この方法で作った塩漬けは、苛性ソーダを使ったものに比べて少し色が暗くなりますが、オリーブ本来の野性味あふれる風味と、発酵による酸味が加わった複雑な美味しさを楽しめます。時間が作り出す魔法のような味わいは、まさにスローフードの代表格と言えるでしょう。急がず、実の変化を見守る時間も自家製の楽しみです。
失敗しないための保存方法とおいしさを保つコツ

せっかく美味しく出来上がったオリーブの塩漬け。できるだけ長く、その美味しさを保ちたいものです。保存状態が悪いと、カビが生えたり味が劣化したりしてしまいます。自家製だからこそ気をつけたい、保存の際の注意点と、より美味しく食べるためのアレンジ方法をご紹介します。
塩分濃度の設定で保存期間が変わる
オリーブの塩漬けの保存期間は、漬け込んでいる塩水の濃度によって大きく左右されます。市販品のように2%程度の低い濃度で保存すると、味はまろやかで食べやすいですが、冷蔵庫に入れていてもあまり日持ちしません。数週間から1ヶ月程度で食べきる必要があります。
一方で、8%〜10%程度の高い濃度で保存すれば、数ヶ月以上の長期保存が可能になります。ただし、そのままでは塩辛すぎて食べられないため、食べる分だけ数時間前から真水に浸して「塩抜き」をする必要があります。保存性を優先するか、すぐに食べられる利便性を優先するかで、濃度を決めると良いでしょう。
また、保存容器は必ず煮沸消毒したものを使用してください。雑菌が入ると、塩水が白く濁ったり、嫌な臭いが発生したりする原因となります。実が塩水の表面から出ないように、落とし蓋(プレッサー)などを使って常に液中に沈めておくことも、酸化やカビを防ぐために非常に重要なポイントです。
酸化を防いで鮮度をキープする工夫
オリーブは空気に触れることで酸化が進み、色が悪くなったり風味が落ちたりします。保存中はもちろん、一度開封して食べる際にも注意が必要です。長持ちさせるための裏技として、塩水の表面に少量のオリーブオイルを浮かべておくという方法があります。オイルが膜となり、空気が直接塩水に触れるのを防いでくれます。
また、取り出す際は必ず清潔な箸やスプーンを使用してください。一度口をつけた箸を容器に入れるのは厳禁です。少しの油断が、バクテリアの繁殖を招いてしまいます。冷蔵庫のドアポケットなど、温度変化が激しい場所よりも、奥の方の一定の低温が保たれる場所で保管するのが理想的です。
もし表面に白い膜のようなものが浮いてきた場合は、産膜酵母(さんまくこうぼ)という酵母の一種であることが多いです。毒性はありませんが、風味を損なうため、見つけたら丁寧に取り除き、塩水を新しく作り替えるなどの処置をしましょう。常に「清潔な状態」を保つことが、最後まで美味しくいただくための鉄則です。
自分好みのフレーバーにアレンジする楽しみ
プレーンな塩漬けが完成したら、さらに一工夫加えて自分だけの「フレーバー・オリーブ」を作ってみましょう。オリーブの塩漬けは、他の食材の香りを吸収しやすいため、ハーブやスパイスと一緒に漬け込むだけで、一気に華やかな一皿に変わります。
例えば、ニンニクのスライス、ローズマリーやタイム、唐辛子を一緒にビンに入れておくだけで、プロの味に近づきます。また、レモンやオレンジの皮を少量加えると、爽やかな柑橘の香りが広がり、魚料理などにも合う洗練された味わいになります。これらは食べる1〜2日前から漬けておくだけで十分香りが移ります。
塩漬けにしたオリーブを、さらにオリーブオイルに漬け込む「オイル漬け」も絶品です。ドライハーブと共にオイルに沈めておけば、保存性もさらに高まり、残ったオイルはパスタやドレッシングにそのまま使えるため、一石二鳥の楽しみ方と言えます。
このように、品種選びから栽培、加工、そして最後のアレンジまで、オリーブには無限の楽しみ方が詰まっています。自分が丹精込めて育てた木から収穫した一粒は、どんな高級品よりも価値があり、格別の味がするはずです。まずは向いている品種を手に入れるところから、あなたのオリーブストーリーを始めてみませんか。
まとめ:オリーブの塩漬けに向く品種を知って豊かな食卓を
オリーブの塩漬けを自宅で楽しむためには、まず品種選びが最大のポイントであることをお伝えしてきました。肉厚で種が小さく、食感の良い「マンザニロ」や、日本での栽培実績が豊富な「ミッション」、そして圧倒的な存在感を誇る高級種の「アスコラーナ」など、目指したい味や食感に合わせて品種を選ぶことが成功への第一歩です。
品種ごとの特徴を理解し、適切なタイミングで丁寧に収穫することで、市販品では決して味わえないフレッシュで香り高い塩漬けを作ることができます。異なる品種を2本以上植えて受粉を助けることや、日当たりと水はけを確保するといった栽培の基本を守れば、毎年秋には実りの喜びを実感できるでしょう。
渋抜きや塩漬けの工程には手間と時間がかかりますが、その分、出来上がった一粒を口にした時の感動はひとしおです。自分好みのハーブやスパイスでアレンジを加えながら、自家製オリーブのある暮らしを存分に楽しんでください。この記事を参考に、あなたにとって最適な「塩漬けに向く品種」が見つかることを願っています。



